再生可能エネルギーを年間の使用電力量と同量調達する「再エネ100%」は、企業の脱炭素経営における大きな節目です。しかし、年間合計が100%でも、太陽光が発電しない夜間や天候が悪い時間帯まで、使用電力とカーボンフリー電力が一致しているとは限りません。
この時間のずれに向き合う考え方が「24/7 CFE(24/7 Carbon-Free Energy)」です。本コラムでは、再エネ100%との違い、GHGプロトコルScope 2改定案との関係、時間別データの整え方、PPAと蓄電池を組み合わせる際の実務を、企業のサステナビリティ・総務・施設管理担当者向けに整理します。
目次

24/7 CFEは、消費する1kWhごとに、カーボンフリー電源による1kWhを、毎時間、電力を使用する地域と対応させることを目指す考え方です。2021年に発足した国連の「24/7 Carbon-Free Energy Compact」は、時間一致、地域性、技術中立性、新たなCFE電源の促進、電力システムへの影響最大化を原則に掲げています。
この時間のずれに向き合う考え方が「24/7 CFE(24/7 Carbon-Free Energy)」です。本記事では、再エネ100%との違い、GHGプロトコルScope 2改定案との関係、時間別データの整え方、PPAと蓄電池を組み合わせる際の実務を、企業のサステナビリティ・総務・施設管理担当者向けに整理します。
一般的な再エネ100%の取り組みでは、一定の市場境界の中で、年間の使用電力量と同量の再エネ電力・環境価値を調達します。これに対して24/7 CFEは、年間総量だけでなく、「いつ」「どこで」発電された電力かを重視します。昼間の太陽光発電の環境価値を夜間の使用分へ充てるだけでは、時間単位の一致にはなりません。
| 比較項目 | 年間の再エネ100% | 24/7 CFE |
| 主な照合単位 | 年間など、制度・基準が定める期間 | 1時間単位を基本とする |
| 時間の考え方 | 年間総量で一致させる | 使用した時間と発電した時間を合わせる |
| 場所の考え方 | 市場境界などの要件に従う | 需要地点へ供給可能な系統・地域を重視する |
| 主なデータ | 年間使用量、調達量、電源属性 | 時間別使用量、発電量、電源属性、地域情報 |
| 主な手段 | 再エネメニュー、証書、PPA等 | 複数電源、PPA、蓄電池、需要シフト等 |
| 位置づけ | 再エネ利用目標・調達基準 | 時間・地域まで含めて電力脱炭素を深める枠組み |
表1 年間の再エネ100%と24/7 CFEの主な違い
アワリーマッチング(hourly matching)は、各時間の電力使用量と、その時間に発電されたCFE電力・環境価値を照合する方法です。例えば、14時台の使用量が100kWh、同じ時間帯に対応するCFE電力が80kWhであれば、その時間の一致率は80%です。 年間のCFEスコアを算定する場合は、各時間の一致量を合計し、同じ期間の総使用量で割る方法が基本になります。ただし、対象拠点、時間帯、系統境界、対象電源、余剰分の扱い、蓄電ロスなどによって結果は変わります。社内KPIや外部開示に使う前に、算定ルールを固定しておくことが重要です。

GHGプロトコルは、購入電力等に伴うScope 2排出量の算定・報告基準を改定しています。2025年10月に公表されたScope 2の公開草案は、ロケーション基準とマーケット基準の併記を維持しつつ、マーケット基準における契約手段の品質要件として、時間一致(hourly matching)と供給可能性(deliverability)を強化する提案を含みます。
時間一致は、電力を使用した時間と、契約手段にひもづく発電時間を原則として1時間単位で合わせる考え方です。供給可能性は、対象電源が需要地点と同じ供給可能地域にあるか、または隣接地域から物理的に供給可能であるかを重視します。提案には、負荷プロファイルによる推計、小規模組織等への適用除外、既存契約への経過措置、複数年をかけた段階導入も含まれています。
24/7 CFEは、企業や自治体等が時間・地域を意識してCFE調達を高度化し、電力システム全体の脱炭素を後押しする自主的な考え方です。一方、GHGプロトコルScope 2は、購入電力等に伴う排出量を算定・報告するための基準です。時間一致や供給可能性という共通点はありますが、24/7 CFEに取り組めば自動的にScope 2要件を満たす、またはScope 2に対応すれば24/7 CFEを達成する、という関係ではありません。
最終基準が確定する前に長期契約を全面的に見直す必要はありません。まずは、主要拠点の時間別データを取得できるか、既存のPPAや電力メニューから発電時間・発電場所・電源種の情報を受け取れるか、契約更新時に必要なデータ項目を追加できるかを確認します。これらは将来の開示対応だけでなく、電力コスト分析、省エネ、デマンドレスポンスにも役立ちます。

日本のスマートメーターは、家庭・オフィス・工場等の消費電力量を30分ごとに計測できる通信機能付き計量器です。30分値を2コマずつ集計すれば、時間別需要データの基礎になります。ただし、実際に取得できる期間、提供形式、取得経路は、小売電気事業者や一般送配電事業者との契約・サービスによって異なるため確認が必要です。
需要データだけでは時間別照合はできません。PPAや再エネメニューについて、発電所、電源種、所在地、発電時刻、発電量、環境価値の帰属、証書の償却状況をひもづけます。時間単位の属性情報を入手できない場合は、契約先にデータ提供の可否と将来の対応方針を確認しておくとよいでしょう。
複数拠点を集計する際は、メーターID、契約名義、タイムゾーン、単位、組織境界を統一します。欠測値の補完方法、速報値と確定値の扱い、保存期間、権限管理も決めておきます。環境価値については、同じ属性を複数の組織や時間帯で主張しないよう、発行・移転・償却まで確認できる証跡が欠かせません。

オンサイトPPAやオフサイトPPAは、新たに開発する再エネ電源から、電力と環境価値を長期に調達する有力な手段です。ただし、太陽光PPAの発電は昼間に集中します。太陽光だけで夜間や悪天候時の需要まで一致させることは難しく、PPAを導入しただけで24/7 CFEになるわけではありません。
先に需要とPPA電源の発電プロファイルを重ね、不足が大きい時間帯を特定します。そのうえで、発電時間の異なる再エネ電源、時間情報を伴う環境価値、蓄電池、デマンドレスポンスを組み合わせます。重要なのは、手段を先に決めるのではなく、不足の形からポートフォリオを設計することです。
本記事では、事業者が蓄電池を設置・保有・運用し、需要家が利用量やサービスに応じて料金を支払うモデルを便宜上「蓄電池PPA」と呼びます。実際の名称、料金体系、所有権、運用権限は事業者によって異なります。
蓄電池は、昼間の再エネを充電し、夕方や夜間に放電することで、時間別の一致率を高める役割を担います。一方、蓄電池そのものが環境価値を生み出すわけではありません。24/7 CFEの算定に反映するには、何で充電したか、いつ充放電したか、変換ロスをどう扱うかを追跡し、環境価値の二重計上を防ぐ必要があります。
| 蓄電池の所有者、設置場所、契約期間、撤去・更新の責任 |
| 充放電の運用指図権と、非常時・ピーク時の優先順位 |
| 蓄電池の所有者、設置場所、契約期間、撤去・更新の責任 |
| 充放電の運用指図権と、非常時・ピーク時の優先順位 |
| 容量、出力、充放電効率、劣化保証、可用性 |
| 基本料金、従量料金、性能連動料金などの料金構造 |
| 需給調整市場等の収益を誰に帰属させるか |
| 充電元電力、環境価値、時間情報、ロスの管理方法 |
| データの提供粒度、監査権、障害時の補完方法 |
24/7 CFEは、最初から100%を目指すより、データを基に不足時間帯を可視化し、段階的に一致率を高める方が現実的です。まずは使用量が大きい拠点、またはデータ取得環境が整った拠点から始めます。
図1 24/7 CFE導入の5ステップ

拠点、電力系統、対象期間、基準年を定めます。KPIは「時間別CFE一致率」「不一致時間数」「不足電力量」などから選び、100%だけを唯一の目標にせず、現状値からの改善幅も管理します。
需要の30分値・時間値、発電実績、契約情報、環境価値を集めます。担当部署、取得頻度、保管場所、欠測時の補完ルールを決め、再現可能なデータ基盤をつくります。
使用量とCFE電力を同じタイムゾーン・粒度で重ねます。月別・曜日別・時間帯別に不足を分解すると、夜間、季節、天候など、調達上の課題が見えます。
不足時間帯に合わせて、PPA、複数電源、蓄電池、需要シフト、環境価値を比較します。CFE一致率だけでなく、コスト、追加性、契約期間、運用負荷、データの検証可能性も評価します。
確定値で実績を再計算し、欠測、充放電ロス、属性の帰属、証書の償却を確認します。目標との差を次年度の調達・省エネ・設備運用へ反映し、対象拠点を段階的に広げます。
クリーンエナジーコネクトは、TDテラス宇都宮を対象に、太陽光発電と蓄電池を組み合わせたオフサイトコーポレートPPAの実証を進めています。実証では、建物の電力使用量と発電量の予測、蓄電池制御、アワリーマッチングによる電源証明、CEC-Cloud™を活用したデータ管理に取り組んでいます。
2026年3月には、国連が主導する24/7 Carbon-Free Energy Compactへ加盟しました。また、TDテラス宇都宮における24/7 CFEの取り組みは「2026 Renewable Energy Markets™ Asia Awards」を受賞しています。こうした実証と運用の知見を、企業ごとの電力使用特性や脱炭素目標に応じた再エネ調達の設計へつなげています。
24/7 CFEは、年間の再エネ調達を否定するものではありません。年間100%を土台に、時間と地域の解像度を上げ、電力を使うすべての時間帯で脱炭素を進める考え方です。GHGプロトコルScope 2改定案でも時間一致と供給可能性が議論されており、企業には電力調達の量だけでなく、発電した時間・場所・電源を説明できるデータが求められる方向にあります。
出発点は、主要1拠点の30分値と現在の調達情報を重ねることです。不足する時間帯がわかれば、PPAで確保すべき電源、蓄電池で移す電力量、需要シフトの余地を具体的に検討できます。
|この記事を書いた人

岡 優来/Oka Yuuki
GXソリューション企画部 マネージャー
法人営業を起点に、事業企画、マーケティング、DX推進、新規事業開発に従事。商社系電力会社にて、事業企画部門のマネジメントをはじめ、データを活用した販売戦略の立案、Webマーケティング、DX推進体制の構築を担当。現在はクリーンエナジーコネクトにて、GX・再生可能エネルギー分野のマーケティング戦略の立案・実行と、新規サービスの企画・開発を担当。
今こそ、共にクリーンな未来へ。
お問い合わせはこちら