企業の脱炭素経営において、再生可能エネルギーの調達方法は大きく変化しています。
これまでは、再エネ電力メニューや非化石証書を活用し、年間の電力使用量に対して再エネ価値を調達する方法が一般的でした。しかし近年は、単に再エネを調達するだけでなく、「新たな再エネ電源の開発につながっているか」「どの時間帯の電力使用に対応しているか」「GHGプロトコルやRE100などの国際的な要件に説明できるか」が重視されるようになっています。
こうした中で注目されているのが、オフサイトPPAです。本コラムでは、オフサイトPPAの仕組み、オンサイトPPAやバーチャルPPAとの違い、2026年時点で企業が注目すべき理由、導入メリットと注意点を解説します。
目次

PPAは「Power Purchase Agreement」の略で、日本語では電力購入契約と呼ばれます。企業が発電事業者などと契約し、再生可能エネルギー由来の電力や環境価値を一定期間にわたって調達する仕組みです。
オフサイトPPAとは、企業の需要地から離れた場所にある再生可能エネルギー発電所から、電力や環境価値を長期的に調達する契約方式です。自社敷地外の発電所を活用するため、屋根面積や敷地条件に左右されにくく、複数拠点や大規模な電力需要にも対応しやすい点が特徴です。
図1:オフサイトPPAの基本スキーム

注:実際の契約形態や電力・環境価値の流れは、供給エリア、契約条件、各事業者の関与方法により異なります。
特に、Non-FITの新規太陽光発電所を活用するオフサイトPPAは、企業の調達行動が新たな再エネ電源の開発につながりやすく、「追加性」のある再エネ調達として説明しやすいメリットがあります。
図2:2026年にオフサイトPPAが注目される3つの背景

企業の購入電力に由来する排出量、いわゆるScope2の算定では、再エネ電力や環境価値をどのように反映するかが重要です。GHGプロトコルではScope2ガイダンスの改定プロセスが進んでおり、電力契約や環境価値の信頼性、トラッキング、時間単位での整合性などが今後さらに注目される可能性があります。
24/7 CFEとは、24時間365日、使用電力をカーボンフリー電力でまかなうことを目指す考え方です。これまでのように年間の使用量と再エネ調達量を合わせるだけでなく、時間帯ごとの電力使用と発電量の対応が重要になります。
燃料価格、為替、電力市場価格、制度変更などにより、企業の電力コストは不安定になりやすい状況が続いています。オフサイトPPAは長期契約を前提とするため、契約条件によっては再エネ調達量やコストの見通しを立てやすくなります。
企業がPPAを検討する際には、オンサイトPPA、オフサイトPPA、バーチャルPPAの違いを理解することが重要です。
表1:オンサイトPPA・オフサイトPPA・バーチャルPPAの違い
| 比較軸 | オンサイトPPA | オフサイトPPA | バーチャルPPA |
| 発電場所 | 自社敷地内・屋根上 | 自社敷地外の発電所 | 自社敷地外の発電所 |
| 主な調達対象 | 電力・環境価値 | 電力・環境価値 | 環境価値 |
| 向いている企業 | 設置スペースがある企業 | 再エネ電力を長期的に調達したい企業 | 電力契約を変更せず環境価値を調達したい企業 |
| メリット | 自家消費しやすく分かりやすい | 大規模調達しやすく追加性を説明しやすい | 既存の電力契約を維持しながら導入できる |
| 注意点 | 屋根面積や建物条件の制約がある | 契約条件や導入可能な拠点の確認が必要 | 市場価格との精算など契約内容の理解が必要 |
グラフ1:再エネ調達で重視される観点の変化(概念図)

注:重要度は市場・制度動向を踏まえた概念整理であり、定量調査データではありません。
オフサイトPPAでは、発電設備を自社の屋根や敷地に設置する必要がありません。都市部のオフィス、賃貸物件、物流施設、商業施設、複数拠点を持つ企業など、オンサイトでの太陽光導入が難しい企業でも再エネ調達を検討できます。
新規の再エネ発電所を開発するオフサイトPPAでは、企業の需要が発電所開発を支える形になります。既存の環境価値を購入するだけでなく、新たな再エネ電源の創出に関与できるため、脱炭素経営の実効性を説明しやすくなります。
オフサイトPPAは、Scope2削減、RE100、CDP、SBT、統合報告書、サステナビリティレポートなどの文脈で活用しやすい調達手法です。どの発電所から、どの環境価値を、どの期間に取得しているかを整理することで、対外的な説明力を高められます。
一方で、オフサイトPPAには注意点もあります。まず、契約期間が長期になりやすい点です。発電所の開発・運営を前提とするため、中長期の電力使用計画や脱炭素目標と合わせて検討する必要があります。
次に、供給エリアや電力使用量によって導入条件が変わる点です。すべての拠点で同じ条件の導入ができるとは限らないため、年間使用量、契約電力、拠点所在地、既存の電力契約を整理することが重要です。
また、環境価値の帰属やトラッキングも確認が必要です。GHGプロトコルやRE100、CDPなどで説明する場合、どの発電所から、どの環境価値を、どの期間に取得しているかを明確に示せる設計が求められます。
オフサイトPPAを検討する際は、まず自社の電力使用状況と脱炭素目標を整理することが重要です。
表2:オフサイトPPA導入前の確認チェックリスト
| 確認項目 | 確認する理由 | 担当部門例 |
| 年間電力使用量 | PPA規模や必要な再エネ調達量を検討する基礎データ | 総務、施設管理 |
| 拠点別・時間帯別使用量 | 複数拠点での導入優先度や将来のアワリーマッチング対応を検討 | 施設管理、エネルギー管理 |
| 現在の電力契約 | 契約切替や既存契約との整合性を確認 | 総務 |
| Scope2削減目標 | 調達量と削減目標を接続する | サステナビリティ |
| 環境価値の扱い | RE100、CDP、SBT、GHGプロトコル対応で説明できるようにする | サステナビリティ、経営企画 |
| 契約期間・価格条件 | 長期契約の社内合意とリスク管理を行う | 経営企画、財務、法務 |
これらを整理することで、オフサイトPPAが適しているか、バーチャルPPAや非化石証書、環境証書調達と組み合わせるべきかを判断しやすくなります。
オフサイトPPAとは、自社敷地外の再エネ発電所から、電力や環境価値を長期的に調達する仕組みです。
2026年時点では、GHGプロトコル改定、24/7 CFE、アワリーマッチング、追加性への関心が高まっており、オフサイトPPAは単なる再エネ調達手段ではなく、企業の脱炭素経営を支える重要な選択肢になっています。
クリーンエナジーコネクトでは、Non-FIT太陽光発電所を活用したオフサイトコーポレートPPAや、24/7 CFE実現に向けた取り組みを通じて、企業の再エネ調達を支援しています。まずは自社の電力使用データと脱炭素目標を整理し、どの調達方法が最適かを検討することから始めましょう。
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