GHGプロトコルとは?|仕組み、Scope分類、算定・報告プロセスをわかりやすく解説

2026.02.09
2026.02.09
記事をシェアする

GHG(Greenhouse Gas:温室効果ガス)プロトコルは、企業が自社およびサプライチェーン全体の排出量を算定・報告するための国際基準です。本コラムでは、GHGプロトコルの基本概念、Scope1・2・3の違いや算定方法、さらに企業活動やサステナビリティ経営にもたらす影響までをわかりやすく解説します。

GHG排出量の正確な把握と透明性の高い報告は、企業が持続可能な成長を実現するうえで欠かせない取り組みです。GHGプロトコルを理解し活用することで、脱炭素への実行力を高め、環境負荷の低減に貢献することができます。

>> お客さまの脱炭素経営を支える総合型支援サービス

GHGプロトコル(Greenhouse Gas Protocol)は、企業や自治体などの組織が温室効果ガス(GHG)排出量を一貫した方法で算定し、報告するための国際基準です。世界中の企業や政府機関が採用しており、気候関連情報開示の土台となる枠組みとして広く位置づけられています。自社の排出量を正確に把握し、その環境影響を評価するうえで欠かせない指針です。

GHGプロトコルの目的

GHGプロトコルの目的は、排出量データの透明性と一貫性を確保し、信頼できる形で比較・評価できるようにすることにあります。基準が統一されることで、企業や業界を横断した排出量の比較が可能となり、削減に向けた取り組みの実効性も高まります。

さらにGHGプロトコルは、算定や報告の枠組みを提供するだけでなく、企業が持続可能な経営戦略を構築するうえでの基盤にもなります。排出量データの可視化を通じて、科学的根拠に基づいた削減目標の設定や、実現に向けた具体的な行動計画の策定を後押しし、企業の中長期的な価値向上に寄与します。

国際的背景と創設の経緯

GHGプロトコルの策定が進んだ背景には、国や企業によって排出量の計算方法が異なり、国際的な比較が困難だったという課題がありました。こうした状況を改善するため、1998年にWBCSD(持続可能な発展のための世界経済人会議)とWRI(世界資源研究所)が中心となり、「GHGプロトコル・イニシアチブ」が創設されました。

2000年にガイドラインの素案が公表され、各国企業による実証とフィードバックを経て、2001年に正式なGHGプロトコルが発表されます。その後も、国際的な気候変動枠組みや各国政策と連携しながら改訂が重ねられ、現在では企業の環境報告における事実上の世界標準として広く浸透しています。この枠組みにより、グローバルな気候目標の達成に向けた企業の貢献がより確かなものとなりました。

企業にとっての脱炭素の必要性と価値

地球温暖化の主要因とされるGHG排出は、エネルギー利用や製造活動など、企業が関与する領域から多く発生しています。そのため企業にとって排出削減の取り組みは、事業の持続可能性にとどまらず、地球規模の気候変動対策における重要な責任でもあります。

GHGプロトコルを活用することで、企業は自社およびサプライチェーン全体の排出状況を体系的に把握し、削減の優先領域を明確にすることができます。これにより、持続可能なビジネスモデルへの転換が進み、長期的な競争力の向上にもつながります。 また、環境意識が高まる中で、透明性の高い排出量報告は、投資家や消費者からの信頼を得るうえでも大きな意味を持ちます。企業の気候変動対応は、社会的評価と事業価値を左右する経営課題として、これまで以上に重要性を増しています。

GHGプロトコルのScope分類と排出量の把握

企業の温室効果ガス(GHG)排出は、自社の敷地内だけで完結するものではなく、原材料の調達から製品の使用・廃棄に至るまで、広範なサプライチェーン全体に存在します。GHGプロトコルでは、こうした排出を体系的に捉えるために、排出源をScope1・Scope2・Scope3の3つに分類しています。この枠組みによって、自社がどこで排出を生じさせ、どこに削減余地があるのかを包括的に把握することができるようになります。

Scope1:直接排出

Scope1は、企業が自ら管理し、直接的にコントロールしている活動から生じる排出を指します。工場内のボイラーや燃焼設備からのCO₂排出、社用車や業務車両の燃料使用による排出などが代表的な例です。

これらの排出は事業活動そのものに直結しているため、最初に取り組むべき領域として位置づけられます。設備の高効率化や燃料転換、再生可能エネルギーの導入といった直接的な対策が、比較的早期に効果を生みやすい領域でもあります。

Scope2:間接排出

Scope2は、企業が購入した電力・熱・蒸気などのエネルギーの使用に伴って発生する排出を対象としています。排出そのものは発電所やエネルギー供給者側で生じますが、最終的にそのエネルギーを利用する企業の活動に結びついているため、企業自身の排出として扱われます。

どのような電源構成の電力を利用するかによって排出量は大きく変わります。再生可能エネルギーを多く供給する電力会社を選ぶことでScope2排出量を低減できる一方、化石燃料依存度の高い電源から電力を購入している場合には、相応に排出量が増加します。

削減策としては、省エネの推進や再エネ電源の導入に加え、グリーン電力証書などの市場手段を活用する方法もあります。Scope2は企業の気候戦略の中でも特に改善の余地が大きい領域であり、各社の取り組みが競争力にも影響する分野です。

Scope3:サプライチェーン全体

Scope3は、自社以外の事業活動に伴う排出、すなわち価値連鎖の上流から下流までに広がる「その他の間接排出」を対象としています。原材料の調達、製造工程で使用される資材の生産、輸配送、販売後の使用段階、廃棄処理など、非常に幅広い活動が含まれます。

総排出量の大半をScope3が占めるケースも珍しくありません。そのため、Scope3を正確に把握することは、自社の環境負荷を本質的に理解するために欠かせない取り組みです。 削減に向けては、サプライヤーとの協働や、物流の効率化、製品ライフサイクルを考慮した設計など、サプライチェーン全体を巻き込んだアプローチが求められます。カテゴリーごとの排出を詳細に把握することで、どこに削減の余地があるのかが明確になり、より効果的な施策につながります。

排出量算定の枠組みと開示の基本要件

GHGプロトコルでは、組織の排出量を正確かつ一貫した方法で算定し、透明性のある形で報告するための一連の手順が示されています。ここでは、算定の準備から報告・目標設定までの基本的な流れを整理します。

算定の目的整理と対象範囲の明確化

算定に着手する前に、まず自社が「なぜ排出量を把握するのか」という目的を明確にすることが重要です。規制対応、投資家への開示、脱炭素戦略の策定など、目的によって算定の深さや対象範囲が変わるためです。

そのうえで、算定の対象とする範囲を設定します。対象となる温室効果ガスの種類、算定に含める組織単位、地理的な範囲、事業活動のどこまでを含めるか、対象期間はどこからどこまでかといった点を明確にし、共通の前提を定めます。こうした整理が後の算定精度やデータ整備の方向性を大きく左右します。

Scopeに基づくデータ整理と排出量の計算

算定の中心となるのが、Scope1・2・3に分類したデータ収集です。エネルギー消費量、原材料の使用量、輸配送の距離、廃棄物処理量など、多岐にわたる活動データが必要となるため、社内の複数部門だけでなく、サプライチェーン全体から情報を集める必要があります。

排出量の算定は、基本的に「排出量 = 活動量 × 排出係数」という式で行われます。こうして算出した各Scopeの排出量を合算することで、企業全体のGHG排出量が明らかになります。

また、算定の信頼性を高めるには、データの管理方法も重要です。データ更新の頻度、保存方法、使用する排出係数の出典などを統一し、継続的に改善していくことで、算定の透明性と比較可能性が向上します。サプライヤーとの対話を通じてデータの出し方や前提を共有することも、精度向上に欠かせません。

報告書作成と削減目標設定のポイント

算定した結果は、GHGプロトコルが定める5つの原則(妥当性・完全性・一貫性・透明性・正確性)に沿って整理し、サステナビリティ報告書や統合報告書などを通じて開示します。必要に応じて第三者による検証を受けることで、外部からの信頼性も高まります。

報告には、数字の開示だけでなく、排出量をどのように削減していくのかという戦略や具体的な取り組みも含めることが求められます。これにより、企業の環境責任に対する姿勢や、持続可能な経営へのコミットメントがより鮮明になります。

さらに、多くの企業は算定結果をもとに、科学的根拠に基づく削減目標(例:SBT)や、自社の事業構造に適した中長期的な目標を設定します。明確な目標を掲げることで、企業は排出削減の進捗を継続的に評価し、計画的に脱炭素の取り組みを進めることが可能となります。

GHGプロトコルが企業経営に与える影響

GHGプロトコルは、単に排出量を把握するための技術的な基準ではなく、企業の事業運営や競争力に直接影響を与える存在になっています。環境負荷の削減はもちろんのこと、企業のブランド価値、投資家からの評価、さらには中長期的な成長戦略にまで広く関わるようになっています。

近年、多くの企業が脱炭素への取り組みを経営戦略の中心に据えるようになりましたが、その土台となるのがGHGプロトコルに基づく排出量データです。信頼性のあるデータに基づく戦略は、企業の持続的な成長を支えると同時に、外部ステークホルダーからの理解と支持を得る上でも欠かせません。
さらに、透明性の高い報告は社会からの信頼を高め、結果として市場での競争優位にもつながっていきます。

ESG開示におけるGHGプロトコルの位置づけ

サステナビリティ報告書では、企業の環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する取り組みが総合的に示されますが、その中心となるのがGHG排出量の情報です。
GHGプロトコルに基づいて算定した排出データは、企業がどの程度環境負荷を削減できているのか、環境戦略がどれほど実効性を持っているのかを定量的に示す主要な指標として扱われます。

この枠組みに沿って情報を開示することで、企業は透明性をもって自社の状況をステークホルダーへ説明できるようになります。それは結果として信頼性を高め、投資家や顧客からの評価向上にも直結します。
GHGプロトコルを適切に活用したサステナビリティ報告は、企業の長期的な成長力を支える重要な要素となっているのです。

GHG開示が企業価値に及ぼすインパクト

GHGプロトコルに基づく排出管理は、企業ブランドを高めるうえでも大きな効果があります。自社の環境負荷を適切に把握し、削減の取り組みを明確に示すことは、消費者や取引先の信頼獲得につながります。環境問題への意識が高まる中、こうした姿勢はブランド価値の向上に直結します。

また、投資家にとってもGHGデータは重要な判断材料です。気候変動リスクの大きい企業は長期的な事業継続性に課題を抱える可能性があるため、GHG排出量をきちんと把握し管理している企業は、より魅力的な投資対象と見なされます。
CSRの観点でも、環境への責任ある姿勢は企業の社会的評価を高め、持続可能な事業運営をアピールするうえで不可欠となっています。

GHGプロトコル導入における課題

一方で、GHGプロトコルの導入はメリットばかりではありません。排出量を正確に算定するためには、多岐にわたるデータを収集する必要があり、そのプロセスは複雑で手間がかかる場合があります。特にScope3まで含める場合、サプライチェーン全体を巻き込んだ取り組みが必要となります。

こうした課題を乗り越えるためには、社内の体制整備やデータ管理システムの導入・改善が求められます。また、排出量算定の専門知識を持つ人材の育成も不可欠です。さらに、サプライヤーとの協力体制を構築することで、データ精度を高め、より効果的な削減施策につなげることが可能になります。

世界で進むGHGプロトコル活用と政策の方向性

気候変動対策がグローバル規模で加速する中、企業の排出量管理における指針として、GHGプロトコルの重要性はかつてないほど高まっています。各国の政策や国際的な枠組みがGHGプロトコルを参照することで、企業は共通ルールに基づいた排出管理を求められるようになり、結果として国境を越えた比較可能性と説明責任が強化されています。

世界の国や企業が掲げるカーボンニュートラル目標は、温室効果ガスの排出と吸収を均衡させ、実質的にゼロ排出を達成することを目指しています。その実現のためには、現状の排出量を正確に把握し、削減計画を立てることが不可欠であり、GHGプロトコルはその基礎となる算定ルールを提供します。

再生可能エネルギーの導入拡大、エネルギー効率の向上、カーボンオフセットの活用など、多様な削減施策を進める際にも、GHGプロトコルに基づいた算定が前提となります。標準化された方法で排出状況を把握することで、企業は取り組みの成果を定量的に示すことができ、ステークホルダーの理解と信頼を得やすくなります。

国際的枠組みとGHGプロトコルの位置づけ

2015年のパリ協定は、世界共通の気候行動を大きく前進させました。「気温上昇を2℃より十分下回り、1.5℃に抑える努力を追求する」という目標の達成に向けて、各国は長期的な排出削減計画を策定しています。

GHGプロトコルは、多くの国際基準において排出量算定の基礎として採用されており、パリ協定の実行における企業側の実務的な役割を支えています。国際的に比較可能な排出データが整備されることで、企業の取り組みはより透明になり、国際社会全体での削減努力が可視化されていきます。

日本企業の脱炭素経営と制度支援の広がり

日本でも、GHGプロトコルに沿った排出管理が広く普及しつつあります。環境省は企業向けの算定・報告ガイドラインを整備し、企業が統一された方法で排出量を管理できるよう支援しています。

さらに、政府は脱炭素化を後押しするため、補助金や税制優遇といった政策面での支援措置を用意しています。再エネ導入、省エネ投資、設備更新、サプライチェーン脱炭素化など、幅広い取り組みが支援対象となっており、これらの施策は企業の自主的な排出削減を促進しています。

こうした支援に加えて、専門機関やコンサルティングサービスを通じた技術支援も提供され、GHGプロトコルを活用した実践的な脱炭素経営の取り組みが国内企業にも広がりつつあります。

これからのGHGプロトコルと企業のサステナビリティ戦略

GHGプロトコルは、国際的な気候政策や企業の脱炭素経営の基盤として、今後も進化し続けることが予想されています。テクノロジーの発展やエネルギー転換の加速により、排出量の算定・管理のあり方は大きく変わりつつあります。これらの動きは、企業がより精密で実効性のある環境戦略を構築するうえで重要な役割を果たします。

デジタル技術によるGHG算定の高度化

デジタル技術の進化は、GHG排出量の算定と管理に大きな変革をもたらしています。ビッグデータ解析やAIの活用により、膨大な活動データを効率的に処理し、より精度の高い排出量の予測が可能になります。また、センサー技術やIoTの普及によって、工場や設備からリアルタイムで排出データを収集できるようになり、状況に応じた迅速な改善策の実施が可能になります。

さらに、ブロックチェーンなどの分散型台帳技術を活用することで、データの改ざんを防ぎ、第三者検証の信頼性を高める動きも進んでいます。こうした技術的な進展は、GHGプロトコルをより実務的かつ透明性の高い枠組みへと進化させる重要な要素となっています。

再生可能エネルギーの普及とエネルギー転換の加速

再生可能エネルギーの普及は、企業の排出削減を大きく後押しする要因のひとつです。太陽光や風力発電の導入拡大に加え、企業が自ら再エネ発電に投資するケースも増えています。これにより、化石燃料依存を抑えることでScope2排出量の削減が期待できます。また、製品のライフサイクル全体を通じた排出量が問われる中で、再エネの利用はScope3の削減にも寄与します。

加えて、エネルギー効率化やスマートグリッドの導入などのエネルギー転換施策を組み合わせることで、企業は持続可能なエネルギーモデルを構築することができます。このような取り組みは、業界全体の脱炭素化を牽引するモデルケースにもなり得ます。

脱炭素に向けた新たな可能性

温室効果ガス削減に向けた技術革新は今後も進み、高度な削減方法が広く普及していくと見込まれています。たとえば、カーボンネガティブ技術の発展やCCUS(炭素回収・利用・貯留)の実装拡大は、企業の排出削減の選択肢を大きく広げる可能性を持っています。

同時に、国際的な連携が強化されれば、企業が海外のサプライチェーンを含めて一体的に排出削減を進めることがより容易になります。こうした流れの中で、GHGプロトコルはグローバルな脱炭素に向けた共通言語として、企業の持続可能な成長を支える役割をさらに強めていくでしょう。

まとめ

GHGプロトコルは、企業が自らの温室効果ガス(GHG)排出量を正確に把握し、効果的な削減策を講じるための国際的な基準として機能しています。Scope1からScope3までの包括的な枠組みにより、企業は事業活動全体を通じた環境負荷を可視化し、持続可能な経営へとつなげることができます。

こうしたデータに基づく透明性の高い報告は、投資家や顧客、取引先といったステークホルダーからの信頼を高めるうえでも重要です。また、国際的な脱炭素の流れが加速する中、GHGプロトコルは各国の政策やグローバルな基準と連携し、企業の取り組みが世界全体の気候目標の実現に寄与することを後押ししています。

今後は、テクノロジー革新や再生可能エネルギーのさらなる普及を背景に、GHG排出の算定・管理のあり方が一層進化していくと考えられます。企業は、GHGプロトコルを基盤としながら、自社の脱炭素戦略を継続的に強化し、持続可能な未来の実現に向けた歩みを進めていくことが求められます。

>> お客さまの脱炭素経営を支える総合型支援サービス

記事をシェアする

今こそ、共にクリーンな未来へ。

お問い合わせはこちら