取引先からの脱炭素要請や環境情報開示への対応を背景に、使用電力を再生可能エネルギーへ切り替える企業が増えています。その代表的な国際イニシアティブが「RE100」です。
ただし、再エネ電力を購入すれば、そのままRE100の進捗として認められるとは限りません。電源の種類、環境価値の帰属、調達した市場、発電設備の運転開始時期など、公式の技術要件に沿って確認する必要があります。
本記事では、2026年8月9日時点の公開情報をもとに、RE100の加盟条件と技術要件、日本企業が選べる再エネ調達方法、導入を進める手順を法人向けに解説します。
目次

RE100は、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す企業向けの国際イニシアティブです。Climate Groupが主導し、CDPとのパートナーシップで設立されました。公式加盟案内によると、440社を超える企業が参加し、140の市場で事業を展開しています。
RE100の役割は、参加企業の取り組みを公表するだけではありません。企業の再エネ需要を集約し、電力市場や政策に対して、再エネを選びやすい環境づくりを促すことも大きな目的です。
RE100が対象とするのは、原則として企業グループの全世界の事業活動で使用する電力です。購入電力だけでなく、自家発電して自社で消費する電力も対象に含まれます。一方、燃料、蒸気、熱などを含む総エネルギーを100%再エネにする制度ではありません。
また、RE100への加盟と、Scope2排出量をゼロまたは削減として算定することは同じではありません。RE100は再エネ電力の使用を評価する枠組みであり、Scope2はGHGプロトコルに基づく温室効果ガス排出量の算定区分です。実務では両方の要件を確認しながら、契約と開示を整合させます。
2025年版の加盟基準では、原則としてRE100へコミットする年間電力需要が100GWh以上であることが示されています。100GWh未満でも、重点市場や業界での影響力、政策提言への関与などにより、例外的に加盟が検討される場合があります。
目標年は原則2040年までです。ただし、日本を含むアジアなど一部地域に本社を置く企業については、事業地域や業種などを踏まえ、2041~2050年の目標が個別に認められる場合があります。中間目標も必要で、2040年までの達成を目指す企業には2030年70%、2035年90%が最低水準として示されています。
加盟企業は、CDPの気候変動質問書を通じて毎年進捗を報告します。公表上の「100%」だけでなく、報告した調達が技術要件を満たすかどうかも確認されるため、契約時から証憑とデータを管理することが重要です。

RE100への対応は、環境部門だけの取り組みではありません。電力調達、事業継続、顧客対応、情報開示をつなぐ経営課題です。主な意義は次のとおりです。
・取引先や投資家への説明力を高める:国際的に共通する基準で目標と進捗を示しやすくなります。
・Scope2削減を計画的に進める:拠点別の使用量と調達手段を整理し、削減計画へ落とし込めます。
・再エネ電源の拡大に需要側から関与する:新設電源と結び付いた長期調達は、事業化を支える需要シグナルになります。
・電力コストの変動に備える:長期固定価格型のPPAは価格変動リスクを抑える選択肢になり得ます。ただし、経済性は契約条件や市場価格によって異なります。
RE100への加盟そのものを目的にするのではなく、自社の削減目標、電力調達方針、財務条件をそろえて検討することが大切です。

RE100の技術要件は、どの再エネ源と調達方法を認めるか、再エネ利用をどのように信頼性高く主張するかを定めています。2025年3月に最新版が公表されました。2026年の報告では、全加盟企業が15年ルールや市場バウンダリなど2022年に導入されたルールを含めて評価されます。
対象となる電源は、風力、太陽光、地熱、海洋エネルギー、持続可能に調達されたバイオマス、持続可能な水力です。バイオマスと水力は、電源種だけで判断せず、持続可能性を示す根拠の確認が必要です。
「再エネ電力を使用した」と主張するには、発電に伴う環境価値を自社が排他的に保有し、他社との二重計上や二重主張がないことを示す必要があります。そのため、証書の発行、移転、償却・無効化まで追跡できる仕組みが重要になります。
加えて、再エネを使用する拠点と、環境価値の元となる発電設備は、RE100が定める同一市場内にあることが原則です。日本の拠点で使用する電力に対し、別市場の証書を自由に充当できるわけではありません。発電国・地域、発電期間、電源種、設備、属性の帰属を契約前に確認
RE100では原則として、再エネ電力の調達元を、主張する年からさかのぼって15年以内に運転開始またはリパワリングした設備とする制限があります。たとえば2026年分の使用を主張する場合は、原則として2011年1月1日以降に運転開始またはリパワリングした設備が対象です。
ただし、すべての調達に一律適用されるわけではありません。自家発電、系統を介さない自営線によるPPA、最初のオフテーカーとして行う長期のプロジェクト特定調達、一定の既存契約などには例外があります。また、例外に該当しない古い設備からの調達も、総電力消費量の15%までは進捗へ算入できます。
2025年版技術要件では、EAC(エネルギー属性証書)が一般的に使われている市場において、電力サプライヤーとの契約にもEACの償却を含める要件が追加されました。日本は、非化石証書、グリーン電力証書、再エネ電力由来J-クレジットが一般的に使われるEACとして挙げられています。
このEAC償却要件は、2027年のCDP開示サイクルにおける報告から適用される予定です。再エネメニューやPPAを契約する際は、証書が誰に帰属し、誰がいつ償却し、需要家がどの情報を受け取れるかまで確認しておくと、将来の報告に備えやすくなります。

再エネ調達は、一つの方法ですべての拠点を賄う必要はありません。需要規模、屋根や土地の有無、契約期間、目標年度に応じて、複数の手段を組み合わせるのが現実的です。
| 手段 | 概要 | 主な利点 | 主な確認事項 |
| オンサイト発電・オンサイトPPA | 自社敷地や屋根で発電し、同一拠点で使用 | 電源が見えやすい/託送料金が不要/自家消費分の購入電力を削減 | 設置面積、耐荷重、日中需要、保守、余剰電力 |
| オフサイトコーポレートPPA | 敷地外の特定電源から、系統を介して電力・環境価値を長期調達 | 新設電源と結び付きやすい/大規模・複数拠点へ展開しやすい/価格安定化の選択肢 | 長期契約、需要と発電の差、託送・インバランス、信用条件 |
| 再エネ電力メニュー | 小売電気事業者から環境価値付きの電力を購入 | 導入しやすい/小規模拠点にも適用しやすい | 電源・設備年齢・証書・償却情報の開示範囲 |
| 環境価値の個別調達 | 電力とは別に非化石証書、グリーン電力証書、再エネ電力由来J-クレジット等を調達 | 不足分を補完しやすい/年度ごとの調整がしやすい | RE100適格性、トラッキング、市場、発電期間、二重計上防止 |
日本で非化石証書をRE100へ用いる場合は、「再エネ指定」であることに加え、発電所情報などのトラッキングが付与され、RE100の技術要件を満たすかを確認します。制度上利用できる証書であっても、個別の発電設備や報告年度の条件まで自動的に満たすとは限りません。
国内外の拠点別に、年間使用量、契約、電力メニュー、自家発電量を整理します。請求データと開示データの集計範囲を合わせます。
RE100加盟の有無にかかわらず、対象会社、目標年、中間目標、Scope2削減計画との関係を明確にします。
オンサイトが可能な拠点、長期PPAが適する需要、短期的に証書で補完する拠点に分けます。
電源、運転開始年、発電期間、市場、環境価値の帰属、償却主体、データ提供項目を契約書へ反映します。
使用量と調達量の差、技術要件への適合、コスト、追加調達の必要量を確認し、ポートフォリオを更新します。
RE100の2024年年次開示報告では、加盟企業が使用する電力のうち再エネ比率は53%でした。日本では25%から36%へ上昇しており、調達が難しいとされてきた市場でも前進が見られます。
一方、再エネ利用の評価は、年間の使用量と発電量を合わせるだけでなく、いつ・どこで発電されたかをより細かく捉える方向へ議論が進んでいます。GHGプロトコルScope2ガイダンスも改定作業中ですが、2026年8月9日時点で最終要件は確定していません。時間単位のマッチングや供給可能性などは今後の論点として注視し、現行基準と将来の検討事項を分けて対応する必要があります。
これから長期契約を結ぶ企業は、現行要件を満たすだけでなく、発電時刻や設備属性を後から確認できるデータ基盤、契約期間中の基準変更への対応条項も検討するとよいでしょう。
はい。技術要件は、再エネ電力の信頼性ある調達・主張を検討する企業にも参考になります。ただし、RE100達成企業を名乗ることや、公式進捗として扱うことは加盟・報告のルールに従います。
RE100加盟の有無にかかわらず、対象会社、目標年、中間目標、Scope2削減計画との関係を明確にします。
必須ではありません。自家発電、小売メニュー、適格な証書なども選択肢です。ただし、新設電源と結び付いた長期のプロジェクト特定調達は、再エネ電源の拡大に与えるインパクトを説明しやすい手段です。
異なります。RE100は使用電力の再エネ化に焦点を当てます。カーボンニュートラルは、Scope1・2・3を含む温室効果ガス排出全体を対象に設定されることがあります。
必ず下がるとは限りません。契約単価、期間、市場価格、需要と発電の差、託送料金などで結果は変わります。価格の絶対額だけでなく、長期の予見可能性や削減価値も含めて評価します。
RE100対応で重要なのは、再エネ比率の数字だけを追うことではありません。対象範囲を定め、公式の技術要件を確認し、自社の電力需要に合った調達手段を組み合わせ、毎年説明できる状態をつくることです。
まずは拠点別の電力使用量と現在の契約を整理し、オンサイト、オフサイトPPA、小売メニュー、証書のどれが適するかを比較してみましょう。長期契約を検討する場合は、設備年齢、環境価値の帰属、証書の償却、基準変更時の扱いまで確認することが欠かせません。
クリーンエナジーコネクトは、再エネ導入の計画策定から、お客さま専用の新規発電所を活用したオフサイトコーポレートPPA、バーチャルPPA、環境証書の調達、導入後の運用まで一貫して支援しています。自社の使用量や目標に合う方法が分からない段階でも、現状整理からご相談いただけます。
|この記事を書いた人

岡 優来/Oka Yuuki
GXソリューション企画部 マネージャー
BtoB領域の営業・サービス企画をキャリアの起点に、商社系電力会社にて、営業・販売戦略の立案やDX推進に従事し、事業企画部門の課長職などを歴任。現在はクリーンエナジーコネクトにて、GX・再生可能エネルギー分野のマーケティング戦略の策定や、新規サービスの企画開発を担当。
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