バーチャルPPAとは?|仕組みやオフサイトPPA・非化石証書との違い、導入時の注意点を解説

2026.08.18
2026.08.19
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バーチャルPPAは、現在の電力契約を維持しながら、特定の再生可能エネルギー発電所で生まれる環境価値を長期的に調達する方法です。複数拠点の小売契約をすぐに変更できない企業でも、追加性のある再エネ調達を進めやすいという特徴があります。

一方で、バーチャルPPAは『環境価値を買えば終わり』という仕組みではありません。価格の精算方法、長期契約のリスク、会計処理、取得する非化石証書が自社の報告目的に合うかを、契約前に確認する必要があります。

本コラムでは、バーチャルPPAの仕組みを押さえたうえで、フィジカル型のオフサイトPPAや非化石証書の購入との違い、導入メリット、注意点、自社に合う再エネ調達方法の選び方を解説します。


バーチャルPPA(Virtual Power Purchase Agreement)とは、一般に、需要家である企業が再エネ発電事業者やアグリゲーターなどと契約し、特定の発電所で生まれる環境価値を、あらかじめ合意した期間と条件で取得する契約を指します。『仮想』と呼ばれるのは、契約した発電所から需要拠点へ電力を物理的に届ける取引ではないためです。

企業が実際に使用する電力は、従来どおり小売電気事業者から購入します。バーチャルPPAは小売電気の契約そのものを置き換えるものではなく、電力調達と環境価値調達を分けて考える手法です。なお、契約設計は案件ごとに異なり、バーチャルPPAに一律の法的定義や精算方式があるわけではありません。

  • 発電事業者が、契約で指定した再エネ発電所で発電する
  • 発電した電力は、卸電力市場や小売電気事業者などへ売却される
  • 発電量に応じて生まれる環境価値が、非FIT非化石証書などの形で需要家へ移転される
  • 需要家は、取得した環境価値を自社の電力使用量に割り当て、条件を満たす範囲で温対法の報告やScope 2の市場基準手法、RE100などに活用する

日本では、一定の条件を満たすバーチャルPPAに基づき、需要家が発電事業者またはアグリゲーターから非FIT非化石証書を直接取得できる仕組みが整備されています。証書の移転時期や対象年度は契約・制度上の手続きと関係するため、発電実績から報告への利用までのスケジュールも確認しておきましょう。

代表的な契約では、契約上の固定価格と卸電力市場価格との差額に、対象発電所の発電量を乗じた金額を当事者間で精算します。市場価格が固定価格を下回れば需要家が差額を支払い、上回れば需要家が対価を受け取る設計が考えられます。これにより発電事業者の収入予見性を高める一方、需要家の支払額は市場価格の影響を受けます。

ただし、すべてのバーチャルPPAが同じ差金決済を採用するわけではありません。固定対価型などもあるため、価格式、参照する市場・時間帯、精算頻度、負の価格や出力制御時の扱いまで契約書で確かめることが重要です。


3つを比較するときは、まず『PPAは契約手法』『非化石証書は環境価値を示す証書』であることを押さえる必要があります。バーチャルPPAの環境価値移転に、非FIT非化石証書が用いられる場合もあります。そのため、バーチャルPPAと非化石証書は完全な代替関係ではありません。

比較項目バーチャルPPAオフサイトPPA(フィジカル型)非化石証書の購入
主な調達対象環境価値電力+環境価値環境価値
電力の供給契約発電所からは受けない小売電気事業者などを介して受ける受けない
発電所との結び付き特定電源と長期契約しやすい特定電源と長期契約しやすい商品・調達条件による
追加性新設電源なら説明しやすい新設電源なら説明しやすい電源の新設・契約条件による
既存小売契約維持しやすい見直し・連携が必要になる場合がある維持しやすい
契約期間中長期が中心中長期が中心短期・必要量の調達もしやすい
主な留意点市場価格、長期契約、会計、証書適格性需給管理、託送・小売連携、契約条件価格・供給量、電源属性、報告要件

最大の違いは、契約した発電所の電力が需要家へ供給されるかどうかです。フィジカル型のオフサイトPPAでは、敷地外の発電所でつくられた電力と環境価値が、小売電気事業者などを介して需要家へ供給されます。バーチャルPPAでは、契約発電所の電力は需要家へ供給されず、需要家は環境価値を取得します。

オフサイトPPAは電力と環境価値を一体的に調達できる一方、需要量と発電量の調整、小売電気事業者との連携、託送や需給管理に関する費用・条件を検討する必要があります。バーチャルPPAは既存の小売契約を維持しやすい反面、使用電力の契約は別途継続しなければなりません。

バーチャルPPAは、特定の発電所から環境価値を取得するための長期契約の枠組みです。非化石証書は、非化石電源で発電された電気が持つ非化石価値などを証書化したものです。日本の非化石証書は、FIT非化石証書、非FIT非化石証書(再エネ指定あり)、非FIT非化石証書(再エネ指定なし)の3区分に整理されます。

2024年度からは、すべての非化石証書に発電所情報などを付与する全量トラッキングへ移行しました。ただし、『トラッキングされていること』だけで、あらゆる報告制度や国際イニシアチブに自動的に適合するわけではありません。再エネ指定の有無、電源種、所在地、発電時期、償却・割当の方法が、自社の報告目的と最新の要件に合うかを確認します。


バーチャルPPAは、契約発電所から電力の物理的な供給を受けないため、現在の小売契約を維持したまま環境価値を追加調達しやすい手法です。拠点ごとに小売契約が異なる、テナントとして入居している、電力契約の一斉変更が難しいといった企業でも検討しやすくなります。

企業が特定の新設発電所と長期契約を結ぶことで、発電事業の収入予見性が高まり、建設や資金調達を後押しできます。単に再エネ比率を高めるだけでなく、『自社の調達が新しい再エネ電源の開発を支えた』と説明しやすい点が、証書のスポット購入との大きな違いです。

ただし、追加性は契約名称だけで決まるものではありません。発電所の運転開始時期、契約締結が事業成立に果たした役割、契約期間、電源属性を確認したうえで表現する必要があります。

必要な環境価値を特定の発電所から長期間取得するため、中長期の再エネ目標に沿った調達計画を立てやすくなります。将来の調達量や価格について一定の見通しを持ちたい企業に適しています。

もっとも、電気料金を含む総コストが固定されるとは限りません。効果は契約方式と市場価格の動きに左右されるため、全体のキャッシュフローで評価しましょう。


差金決済型では、卸電力市場価格が契約上の固定価格を下回る局面で、需要家の支払額が増える設計が一般的です。契約期間全体について複数の価格シナリオを置き、支払額の上限、精算頻度、参照価格、負の価格、出力制御、発電量未達、設備停止、中途解約、契約終了時の扱いを確認します。

企業会計基準委員会は2025年11月、実務対応報告第47号『非化石価値の特定の購入取引における需要家の会計処理に関する当面の取扱い』を公表しました。一定の特徴を持つ契約について、需要家は対象発電所で発電が行われ、かつ金額を信頼性をもって測定できる時点で費用処理し、同時に対価の支払義務に係る負債を計上します。遅くとも国による電力量の認定時点では、金額を信頼性をもって測定できるものとして扱います。

同報告は2026年4月1日以後に開始する連結会計年度・事業年度の期首から適用されます。ただし、対象外となる契約形態や、税務、国際会計基準などは別途検討が必要です。契約交渉の早い段階から経理・財務・法務・税務・サステナビリティ部門を巻き込み、監査人や外部専門家にも確認しましょう。

取得した環境価値をScope 2やRE100などへ使うには、証書が各制度・イニシアチブの要件を満たし、対象電力使用量との整合が取れていることが必要です。権利の帰属、発電時期と使用期間、電源属性、地理的範囲、二重計上防止、償却・割当の証跡を確認してください。

GHGプロトコルでは、2015年版のScope 2ガイダンスが現行ガイダンスとして掲載されている一方、改定作業が進んでいます。2025年から2026年にかけて行われた公開協議では、時間単位のマッチングや供給可能性などが論点となりました。最終ルールは変更される可能性があるため、契約前と報告時の双方で最新情報を確認することが重要です。

バーチャルPPAを導入しても、工場・オフィス・店舗で使う電力は小売電気事業者などから調達し続けます。環境価値の契約だけでなく、既存の電気料金メニュー、契約更新時期、電力使用量の変動も含めて、総コストと再エネ比率を管理する必要があります。


一つの手法ですべての使用電力を賄う必要はありません。ベースとなる需要をPPAで確保し、発電量と使用量の差や移行期間の不足分を環境証書で補うなど、複数の手法を組み合わせる方が、追加性・コスト・柔軟性のバランスを取りやすい場合があります。

検討手順確認内容
電力使用量を把握する拠点別・時間帯別の使用量、契約種別、更新時期を整理する。
目標と優先順位を決める再エネ比率、目標年度、追加性、予算、対外説明の重要度を明確にする。
複数シナリオを比較するバーチャルPPA、フィジカル型オフサイトPPA、非化石証書、または組み合わせを、価格・量・契約期間・リスクで比較する。
社内外で適格性を確認する経理・法務・税務・調達部門、監査人、専門家と会計・契約・報告要件を確認する。

電力と環境価値をまとめて長期調達したい企業には、フィジカル型のオフサイトPPAが候補になります。既存の小売契約を維持し、複数拠点へ追加性のある環境価値を配分したい企業には、バーチャルPPAが有力です。短期的な不足分を補いたい場合や、需要変動が大きい場合は、非化石証書を組み合わせると調整しやすくなります。


バーチャルPPAを導入した場合でも、小売電気事業者との電力供給契約は必要です。バーチャルPPAでは、契約した発電所から需要家へ電力そのものが供給されるわけではないため、実際に使用する電力については、別途小売電気事業者から調達する必要があります。

必ずしもそうではありません。差金決済は代表的な方式ですが、固定対価型などもあります。価格式と精算条件を個別に確認してください。

バーチャルPPAは特定の発電所と長期的に結び付き、その事業成立を支えやすい点が特徴です。証書の購入は必要量を柔軟に補いやすい一方、追加性の説明力は電源・契約条件によって異なります。

要件を満たす証書を適切に取得・割当・管理できれば活用できる場合があります。ただし、電源属性、期間、地理的範囲などの要件は制度・イニシアチブごとに異なり、改定もあり得るため、最新ルールを確認してください。


バーチャルPPAは、既存の電力契約を維持しながら、特定の再エネ発電所から環境価値を長期的に調達できる手法です。フィジカル型のオフサイトPPAとは電力供給の有無が異なり、証書を必要量だけ購入する方法とは、発電所との結び付きや契約期間、追加性の説明しやすさが異なります。

ただし、最適な方法は、拠点構成、電力使用量、脱炭素目標、予算、市場価格リスクへの許容度によって変わります。価格シナリオ、契約条件、会計処理、証書の適格性を一体で検討し、必要に応じてPPAと環境証書を組み合わせることが大切です。

クリーンエナジーコネクトでは、お客さま専用の再エネ発電所を新規に開発・建設し、オフサイトコーポレートPPAとバーチャルPPAの双方を提供しています。環境証書の調達支援や脱炭素計画の策定を含め、企業ごとの目標と電力利用状況に合わせた再エネ調達を一貫して支援します。自社に合う組み合わせや導入可能性を整理したい段階からご相談いただけます。

|この記事を書いた人

岡 優来Oka Yuuki
GXソリューション企画部 マネージャー

BtoB領域の営業・サービス企画をキャリアの起点に、商社系電力会社にて、営業・販売戦略の立案やDX推進に従事し、事業企画部門の課長職などを歴任。現在はクリーンエナジーコネクトにて、GX・再生可能エネルギー分野のマーケティング戦略の策定や、新規サービスの企画開発を担当。

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