FIP制度は、再生可能エネルギー発電事業者が電力を市場や相対取引で販売し、その売電収入に一定のプレミアムを上乗せする制度です。2022年4月に始まり、再エネを電力市場へ統合していくための仕組みとして運用されています。
法人需要家にとって重要なのは、FIPが発電事業者向けの支援制度である一方、オフサイトPPAやバーチャルPPAの価格設計、環境価値の受け渡し、契約上のリスク分担にも関係する点です。FIPを利用しているだけで、再エネ調達コストが固定されたり、追加性が認められたりするわけではありません。
本記事では、FIP制度の仕組みとFIT制度との違い、2026年度の主な制度動向、企業が再エネ調達を検討する際の確認ポイントを整理します。

FIPは「Feed-in Premium(フィードインプレミアム)」の略称です。再エネ発電事業者が発電した電力を卸電力市場や相対取引などで販売し、その販売電力量に応じてプレミアム(供給促進交付金)を受け取ります。
国が固定価格での買取を支えるFIT制度に対し、FIP制度では発電事業者が売電先を選び、市場価格や需給を意識して事業を運営します。制度の目的は、再エネ事業への投資予見性に配慮しながら、再エネの電力市場への統合を促すことにあります。

一般的な再エネ100%の取り組みでは、一定の市場境界の中で、年間の使用電力量と同量の再エネ電力・環境価値を調達します。これに対して24/7 CFEは、年間総量だけでなく、「いつ」「どこで」発電された電力かを重視します。昼間の太陽光発電の環境価値を夜間の使用分へ充てるだけでは、時間単位の一致にはなりません。
| 比較項目 | FIT制度 | FIP制度 |
| 電力の販売 | 法令に基づく固定価格で、買取義務者が買い取る | 卸電力市場や相対取引などで発電事業者が販売 |
| 主な収入 | 調達価格×買取電力量 | 売電収入+プレミアムなど |
| 価格変動の影響 | 制度上の買取単価は原則固定 | 市場・契約条件、発電量などの影響を受ける |
| 需給管理 | 特例的な仕組みが適用される | 発電計画の提出とインバランス対応が必要 |
| 環境価値 | FIT非化石証書として市場で取り扱われる | 発電事業者側で販売可能。二重計上を避ける契約管理が必要 |
※FITとFIPは、どちらかが一律に優れているという関係ではありません。対象となる電源種、出力規模、認定年度、販売方法、事業者の需給管理能力などにより、適した制度は異なります。

FIP電源の収入は、主に電力の売電収入とFIPプレミアムで構成されます。環境価値を販売する場合は、その対価も収入になり得ます。一方で、需給管理や市場取引、アグリゲーションに伴う費用なども考慮しなければなりません。
| 収入の基本イメージ 電力の売電収入 + FIPプレミアム + 環境価値の販売収入 - 需給管理・取引等の費用 |
実際の収支は、売電契約、発電実績、エリア、市場価格、出力制御、手数料などで変わります。FIPは一定の投資予見性を支える制度ですが、収入額を固定保証するものではありません。
FIPプレミアムの単価は、簡略化すると「基準価格-参照価格」で捉えられます。基準価格は、再エネ電源の事業コスト等を踏まえて設定される、プレミアム算定の基準となる価格です。参照価格は、市場取引等で期待される収入を表し、卸電力市場価格の実績や非化石価値相当額、バランシングコストなどを反映して月ごとに算定されます。
バランシングコストは、自然変動電源の発電予測誤差に対応するための費用に配慮するものです。制度開始時からの経過措置として設定されており、電源種や年度によって取扱いが異なるため、事業収支を検討する際は最新の算定諸元を確認する必要があります。
また、市場価格が0.01円/kWhとなるコマはプレミアム交付額の基礎となる電気供給量から除かれ、そのコマに対応するプレミアムは他の時間帯の単価に反映されるよう調整されます。ただし、出力制御や売電機会の減少による影響がすべて補償されるという意味ではありません。
FIP電源は、原則として他の市場参加電源と同様に発電計画を提出し、計画値と実績値の差であるインバランスに対応します。太陽光や風力は天候によって発電量が変わるため、予測精度の向上や計画修正が事業運営の重要な要素になります。
実務では、アグリゲーターが複数の発電所を束ね、発電予測、売電、需給管理、精算などを担うことがあります。FIP電源を含むPPAを検討する場合は、誰がインバランスを負担するのか、費用が契約単価にどう反映されるのかを確認しておくことが重要です。

| 売電先や販売方法の選択肢が広がり、市場や相対契約を活用できる |
| 市場価格や需給を意識した発電・蓄電・メンテナンスの工夫につながる |
| 環境価値を発電事業者が販売でき、PPAなどの長期契約を設計しやすくなる |
| アグリゲーションや蓄電池を組み合わせた新たな事業モデルを検討できる |
| 市場価格、発電量、出力制御などにより月ごとの収入が変動する |
| 発電計画の提出、インバランス対応、精算などの実務負担が生じる |
| プレミアム算定や環境価値の取扱いが複雑で、契約条件の読み分けが必要になる |
| アグリゲーターや売電先の手数料、信用力、契約期間も事業性に影響する |
需要データだけでは時間別照合はできません。PPAや再エネメニューについて、発電所、電源種、所在地、発電時刻、発電量、環境価値の帰属、証書の償却状況をひもづけます。時間単位の属性情報を入手できない場合は、契約先にデータ提供の可否と将来の対応方針を確認しておくとよいでしょう。
メリットとリスクは、発電事業者だけに生じるとは限りません。PPAの価格調整条項や差金決済の設計によっては、法人需要家も市場価格や発電量の変動影響を負います。契約前にシナリオ分析を行い、リスクの所在を明確にすることが欠かせません。
FIT・FIP制度の対象区分、基準価格、入札条件は年度ごとに見直されます。2026年度の事業用太陽光発電(地上設置)では、FIP認定対象のうち250kW以上が入札対象となり、屋根設置は入札対象外です。2026年度は4回の入札が予定され、上限価格はいずれも9.6円/kWhとされています。
また、事業用太陽光の地上設置(10kW以上)区分は、2026年度の落札案件などを除き、2027年度以降はFIT・FIP制度の新規認定対象から外れる方針が示されています。既認定案件や2026年度落札案件のFIP移行には別途取扱いがあります。
この変更は、すべての太陽光発電への支援終了を意味するものではありません。屋根設置などは区分が異なり、電源種や規模によって条件も変わります。案件を評価する際は、認定年度、設置形態、出力規模、入札の有無を個別に確認してください。制度の対象・価格は今後も更新される可能性があるため、経済産業省・資源エネルギー庁の最新情報を参照することが必要です。
オフサイトPPAは、自社敷地外の再エネ発電所から、電力と環境価値を長期的に調達する契約です。一般には小売電気事業者を介して需要拠点へ電力を供給します。
バーチャルPPAは、需要家が従来の小売電気事業者との電力契約を維持しながら、別途、再エネ発電事業者などと環境価値や差金決済に関する長期契約を結ぶ手法です。物理的な電力供給を伴わない点が、オフサイトPPAとの大きな違いです。
FIP電源は、環境価値を発電事業者側で販売できるため、PPAと組み合わせられる場合があります。ただし、FIPプレミアムが需要家の価格変動リスクを一律に解消するわけではありません。固定価格、差金決済、環境価値の単価、発電量不足時の扱いなどは契約ごとに異なります。
FIPは国の支援制度の区分、Non-FITはFITによる固定価格買取を利用しない電源を示す表現です。一方、追加性は、新たな再エネ電源の開発や再エネ供給量の増加にどのように寄与したかという評価軸です。これらは同じ概念ではありません。
企業がScope2削減やRE100などへの活用を想定する場合は、FIPの有無だけで判断せず、非化石証書の種類とトラッキング、環境価値の帰属、発電期間と報告期間の対応、二重計上防止などを確認する必要があります。国際的な開示基準やイニシアティブの要件は改定されることがあるため、最新ルールに照らした確認も欠かせません。
| 確認項目 | 主な確認内容 |
| 1. 電源の属性 | FIT・FIP・Non-FITの別、認定年度、電源種、出力、運転開始時期 |
| 2. 価格の構成 | 固定・変動部分、FIPプレミアムの扱い、手数料、制度変更時の調整 |
| 3. 調達量 | 想定発電量、需要との不一致、未達・余剰時の取扱い、出力制御 |
| 4. 環境価値 | 証書の種類、トラッキング、帰属、移転時期、二重計上防止 |
| 5. 運用体制 | 売電、発電予測、インバランス、精算を担う事業者と費用負担 |
| 6. 契約リスク | 契約期間、解約、信用補完、法令・制度変更、会計・税務上の確認 |
特に長期契約では、単価だけを比較すると、発電量の変動や制度変更時の負担を見落とすことがあります。複数の市場シナリオと需要見通しを用い、環境価値を含む総コストと脱炭素効果を確認することが重要です。
FIP制度は、再エネ発電事業者が市場や相対取引で電力を販売し、売電収入にプレミアムを加える市場連動型の支援制度です。FIT制度より販売の自由度が高い一方、発電量や市場価格、出力制御、インバランスなどの影響を受けるため、収入が自動的に固定されるわけではありません。
法人需要家がFIP電源を含むPPAを検討する際は、制度区分だけでなく、価格の構成、環境価値の帰属、需給管理、契約上のリスク分担を一体で確認する必要があります。FIP、Non-FIT、追加性の違いを整理し、自社の脱炭素目標と電力使用特性に合う調達方法を選ぶことが大切です。
|この記事を書いた人

岡 優来/Oka Yuuki
GXソリューション企画部 マネージャー
BtoB領域の営業・サービス企画をキャリアの起点に、商社系電力会社にて、営業・販売戦略の立案やDX推進に従事し、事業企画部門の課長職などを歴任。現在はクリーンエナジーコネクトにて、GX・再生可能エネルギー分野のマーケティング戦略の策定や、新規サービスの企画開発を担当。
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